新「日本の古代史」(佃説)

はじめに

これまで書いてきた論文を年代順に並べて『新「日本の古代史」(上)(中)(下)』として出版した。
しかし、各論文は独立して書いている。そのため「歴史の流れ」を読み取るのは難しいという声があった。
今年(2020年4月)、二日間(夜まで延長有り)の講演をすることになった。講演資料はほぼ完成した。ところが新型コロナ・ウィルスのために中止(延期)になった。そこで講演資料を基に「日本通史」を書くことにした。講演にも使えるように考慮しながら「歴史の流れ」を理解してもらうことに重点を置き「通史」を書いた。
私の「古代史」は従来の「日本史」とはまったく異なる。それを明確にするために「(佃説)」を挿入した。
新しい「日本の古代史」を「通史」として理解していただければ幸いである。

(概要篇)ではあるが、次の二点については詳細に記述した。
一つは、「倭人(天氏)」の渡来(天孫降臨)である。
「倭人」(天氏)」の渡来により、「日本人」が誕生する。「現代日本人」のDNAの8割は「倭人」(天氏)」のDNAである(本文)。
「倭人」(天氏)」は「日本語」をもたらした。「日本」の始まりである。
そのため「倭人(天氏)」の「誕生」から「渡来ルート」、「渡来地」について詳述した。
もう一つは、「邪馬壹国」問題である。「邪馬壹国」関連の本は毎年出版されている。「邪馬壹国」問題は未解決になっている。国民の関心も高い。
そのため「邪馬壹国」について、その争点、問題点等をほぼ網羅するように「邪馬壹国の誕生」、「邪馬壹国への行程」、「邪馬壹国と伊都国の争い」、「邪馬壹国と狗奴国の争い」、「邪馬壹国の終焉」等について詳述した。未解決問題は無いと考えている。

○図表は各章の最後に掲載している。
○本文に「××号」とあるのは巻末の【参考文献】を参照されたし。

2020年 7月

佃   收


目 次


第1部 倭人の誕生から「倭の五王」まで ( )内はページ

第1章 人類の誕生と移動(3)

  1. DNAと遺伝子(3)
  2. ホモ・サピエンスの誕生(4)
  3. 出アフリカ(Y染色体遺伝子による)(4)

第2章 倭人の誕生(佃説)(7)

  1. 北方モンゴロイドの移動(約1万8000年前)(7)
  2. 満州人・朝鮮人・日本人の祖先(7)

第3章 倭人(天氏)の移動(9)

  1. 呉の倭人(9)
  2. 呉越の戦いと東表の倭人(10)
  3. 山東省の倭人(天氏)(11)

第4章 倭人(天氏)と箕子朝鮮(佃説)(13)

  1. 箕子朝鮮(13)
  2. 倭人(天氏)の移動(14)

第5章 倭人「卑弥氏」(佃説)(18)

  1. 倭人(卑弥氏)とは(18)
  2. 「倭人(卑弥氏)」の移動(19)

第6章 中国東北地方の古代史(周~戦国時代)(22)

  1. 燕と箕子朝鮮の戦い(22)
  2. 古代中国王朝の領域(23)
  3. 「燕の長城」と「万里の長城」(23)
  4. 箕子朝鮮と大凌河(25)
  5. 「倭人(天氏)」と「箕子朝鮮」の関係(26)

第7章 中国東北時代の古代史(前漢時代)(31)

  1. 前漢時代の中国東北地方(31)
  2. 漢と衛氏朝鮮(32)

第8章 「倭人(天氏)」と高天原(佃説)(38)

  1. 天氏と卑弥氏の出会い(38)
  2. 天氏による「高天原」の建国(39)
  3. 高天原の時代(41)

第9章 『古事記』『日本書紀』の「天孫降臨」(44)

  1. 『日本書紀』の「天孫降臨」(44)
  2. 『古事記』の「天孫降臨」(45)
  3. 『古事記』『日本書紀』の「天孫降臨」の問題点(47)

第10章 「倭人(天氏)」の移住(佃説)(48)

  1. 高天原の危機(48)
  2. 高天原からの移住の決意(49)
  3. 筑紫へ移住(天孫降臨)(49)

第11章 「倭人(天氏)の渡来」の[検証](52)

  1. 吉武高木遺跡(52)
  2. 「倭人(天氏)の渡来」の検証(須玖遺跡)(54)
  3. 「倭人(天氏)の渡来」の検証(吉野ヶ里遺跡)(56)
  4. 「倭人(天氏)の渡来」の検証(考古学から)(57)
  5. 「倭人(天氏)の渡来」の検証(人類学より)(61)

第12章 伊都国と神都(佃説)(67)

  1. 伊都国の樹立(67)
  2. 伊都国の発展(68)

第13章 「卑弥氏」の渡来(第1回目)(佃説)(70)

  1. 「倭城」からの逃亡(第1回目)(70)
  2. 「倭人(卑弥氏)」は朝鮮半島へ(71)
  3. 朝鮮半島の「倭国」(71)
  4. 弥生時代後期と委奴国の樹立(72)
  5. 「委奴国」と金印(74)
  6. 不彌国(75)
  7. 伊都国王権(76)

第14章 「後漢時代」の倭(佃説)(78)

  1. 公孫氏と「倭」(78)

第15章 「卑弥氏」の渡来(第2回目)(佃説)(80)

  1. 「倭人国」と「倭国」(80)
  2. 伊都国王権と倭国の戦い(第1回)(81)
  3. 「倭国(邪馬壹国)」の位置(佃説)(82)
  4. 「邪馬壹国」と「狗奴国」(87)
  5. 北部九州「倭国」の樹立(88)
  6. 公孫氏の滅亡と「景初二年」問題(89)

第16章 倭国と伊都国、狗奴国の戦い(佃説)(94)

  1. 倭国と狗奴国の戦い(1回目)(94)
  2. 伊都国王権と倭国の戦い(95)
  3. 「倭国」と「狗奴国」の戦い(2回目)(96)

第17章 神武東征(逃亡)(佃説)(98)

  1. 伊都国と倭国の戦い(98)
  2. 神武東征のルート(99)

第18章 崇神天皇(佃説)(105)

  1. 崇神天皇の渡来(105)

第19章 貴国の樹立(佃説)(111)

  1. 熊襲征伐(111)

第20章 「倭の五王」の倭国(佃説)(116)

  1. 倭国の樹立(116)
  2. 「倭の五王」による全国支配(116)
  3. 「倭の五王」による全国支配の検証(117)
  4. 「倭の五王」と年号(119)

第21章 「第1部」のおわりに(122)

  1. 「大彦」の子孫(122)
  2. 「天氏」と「卑弥氏」の渡来ルートとDNA(122)
  3. 「現代日本人」の形成(123)

第2部 「磐井の乱」から「高市天皇」まで(127)

第1章 物部麁鹿火王権(佃説)(129)

  1. 「磐井の乱」(129)
  2. 「磐井の乱」の年代(130)
  3. 稲荷山古墳(131)
  4. 「辛亥年=471年」説(定説)の根拠(134)
  5. 「定説」の検討(135)
  6. 「辛亥年」=「531年」(佃説)(136)
  7. 「礫槨」の年代(137)
  8. 物部氏と物部麁鹿火(139)
  9. 物部麁鹿火王権とは(佃説)(140)
  10. 物部麁鹿火王権の本拠地(佃説)(141)
  11. 仏教伝来(佃説)(142)

第2章 阿毎王権(俀国)(佃説)(146)

  1. 新王権(146)
  2. 新王権の本拠地(147)
  3. 新王権=「俀国」(佃説)(148)
  4. 阿毎王権と百済救援(151)
  5. 阿毎王権と元興寺(152)
  6. 阿毎王権と蘇我氏(佃説)(153)
  7. 阿毎王権と日羅事件(佃説)(154)

第3章 豊王権(佃説)(158)

  1. 用明天皇(158)
  2. 「欽明天皇」への疑問(159)
  3. 用明天皇の本拠地(160)
  4. 用明天皇の殺害(163)
  5. 用明天皇の系譜(164)
  6. 推古天皇(165)
  7. 豊王権と磯長(167)

第4章 上宮王権(佃説)(170)

  1. 上宮法皇(170)
  2. 上宮王権(171)
  3. 上宮王家(174)
  4. 上宮王権の本拠地(176)
  5. 舒明天皇(177)

第5章 天武王権(佃説)(181)

  1. 「天武王権」の樹立(181)
  2. 天武天皇と「天武天皇の父」(183)
  3. 天武王権の本拠地(184)
  4. 『日本書紀』の記す百済救援(185)
  5. 天武天皇と「百済救援」(187)
  6. 朝倉宮(189)
  7. 天武天皇と「白村江の戦い」(192)
  8. 天武天皇による西日本の支配(193)
  9. 「壬申の乱」(193)

第6章 高市天皇(佃説)(199)

  1. 高市天皇とは(199)
  2. 「高市天皇紀」(200)
  3. 藤原京の造営(200)

第3部 「王権乱立」の時代(佃説)(203)

第1章 豊王権の樹立(佃説)(205)

  1. 豊王権の独立(205)
  2. 阿毎王権と豊王権の独立問題(1)(206)
  3. 阿毎王権と豊王権の独立問題(2)(206)

第2章 上宮王権と豊王権(佃説)(208)

  1. 上宮王権と蘇我氏(208)
  2. 上宮王権の独立(209)
  3. 上宮王権と阿毎王権(210)
  4. 豊王権の再興(211)

第3章 阿毎王権から天武王権へ(佃説)(212)

  1. 「天武王権」の樹立(212)

第4章 上宮王権内の争乱(佃説)(214)

  1. 上宮王権と蘇我氏(214)
  2. 「豊王権」の逃亡(215)
  3. 「豊王権」の滅亡(216)

第5章 天武王権と上宮王権(佃説)(218)

  1. 天武王権は上宮王権を滅ぼす(218)
  2. 上宮王権の逃亡(218)
  3. 「上宮王権」の滅亡時期(219)
  4. 「壬申の乱」の深層(221)

第4部 「古代史」の改竄(223)

第1章 天武天皇による「古代史の捏造」(佃説)(225)

  1. 「万世一系」の系譜(225)

第2章 『日本紀』『日本書紀』『続日本紀』の成立(佃説)(227)

  1. 『日本紀』の成立(227)
  2. 『日本書紀』の成立(228)
  3. 『日本書紀』と『続日本紀』の成立時期(228)

第3章 『日本紀』を『日本書紀』に改竄(佃説)(230)

  1. 『日本紀』改竄の理由(230)
  2. 『日本紀』改竄の方法(1)(230)
  3. 『日本紀』改竄の方法(2)(231)
  4. 『日本紀』改竄の方法(3)(232)

おわりに

「歴史研究のあり方」について考えてきた。
それをまとめたものである。皆様のご参考になれば幸甚である。

「歴史研究」のあり方

佃  收

1.「歴史研究」の基本
 「歴史」を研究するには「時間(年代)」と「空間(場所)」を解明することから始めるべきである。
 ○「いつ」、「どこで」を究明することが最重要である。
2.「歴史研究」は科学的であること。
 「科学的」とは「根拠(データ)に基づき理論を立てること」である。
  ■「理論(仮説)にデータを合わせるのではなく、データに理論を合わせるのが科学である」。 酒井邦嘉氏
3.「歴史研究」は「論理的」であること。
  ■データや情報(史料等)による「根拠」を基に論を進めるべきである。
  ■「根拠」の無い「仮説」は砂上の楼閣である。
  ■論理に飛躍があってはならない。
  ■「研究」は論理の積み重ねである。
4.「情報(データ)」は多いほど史実に近づく。
 「古代の情報」は少ない。したがって「古代史」を完全に復元することは出来ない。
 ・「歴史研究」はあくまでも「仮説」であり、「…であろう」ということになる。
 ・論理学でいう「蓋然的推論(帰納推論)」になる。
 ・「蓋然的推論」では「前提」になる「命題」から推理する。
 ・その「前提」に新しい前提を追加すると「結論は変わってくる。
 ・すなわち「前提」は多い方が正しい結果に近づく。
○「歴史研究」は多くの情報を集めることから始めるべきである。
 ・検討もしないで「偽書」として排除してはならない。自ら「情報(命題)」を少なくしている。
5.「歴史研究」には「物的証拠」が重要である。
 「文献」だけからの研究では「歴史」を正しく復元することは難しい。
 ・「文献」は「解釈の違い」がある。
 ・「解釈の間違い」は意外に多い。
  ■「物的証拠」として「遺跡・遺物」、「地形・地質」、「地名」等を取り入れて「文献」と照合すべきである。
6.「仮説(理論)」は「検証」しなければならない。
 「日本の古代史」で「定説・常識」になっている「説」でも「検証」がなされていないものが多い。
  今の「日本の古代史」の「定説」には「間違い」が多い。
  □「仮説(理論)」は「検証」して初めて認められる。

  ○これらを考慮しながら「古代史」を研究している。

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